笛田エース入団物語 -2
息子は初めて買った2,980円のグローブをたいそう気に入って、何度かの修理を経て、結局、笛田エース卒団までの4年間使い通した。中学で入団したクラブチームでもしばらく使い続けた。
最後はボールポケットに穴が空き、さすがにサイズも小さくなってしまい、まさに「限界」という感じまで使い切った。
2,980円の値段で小学時代の息子を最初から最後まで支えてくれたグローブ。息子は「いやこのグローブほんとに捕りやすいんだよ」と言ってくれた。値段以外もカッコいいグローブだった。
感傷的なほうなので、思い出したようにオイルアップをしているが、使う相手がいなくなったボロボロのグローブを見るのはちょっと寂しい。
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チームに入団してからの息子はとにかく笛田エースに行くのが楽しかったようだ。試合?勝つ?負ける?なんですかそれ?ただただみんなと集まって、必死にボールを追いかけて、グローブにボールが入れば良かったし、バットにボールが当たればそれだけで喜んでいた。
自分のそばに飛んできたボールをまるでバッタでも飛んできたようにワチャワチャと追いかける。自分のそばだけでなく、目に入ったボールは全部追いかけていた。守備範囲の広さと言ったらロベルト・アロマーも真っ青だ。セカンドを守っていてもサード、レフト、センター、ライトまで飛んでいく。ちょっと目を離すとグラウンドの中で迷子だ。ねぇキミ。うちの息子、どこ守ってるか知りませんか?
バッティング練習もたくさんさせてもらった。マイバットは川崎にいるお友達のお下がり、その名も「イチローモデル」。
※蛇足ですが卒団までバットはすべてお下がりでした。譲ってくれた皆さまありがとうございます。
家に帰ると、自分がどれだけ痛烈な当たりのボールを捕ったか、どれだけ痛烈な当たりのバッティングをしたか、とにかく楽しそうに愛おしそうに話してくれた。練習を見ていた親からすると、たぶん・どう見ても・絶対に「痛烈ではなかった」はずなのだが、本人が楽しそうに言うのだから間違いない。本人なりにガッツを見せてキャッチし、本人なりにフルスイングした感覚はあるのだろう。ならそれでいいや。僕も「すごいねー、それはファインプレーとかヒットって言うんだ」と答えておいたよ。息子は「ファインプレー?ヒット?」と嬉しそうに復唱した。神様、僕はまた嘘をつきました…
試合に興味のなかった息子もみんなが試合で活躍しているのを見るうちに「どうやら野球には勝ち負けがあるらしい」ということに(ついに)気付いてしまい、そうこうしてるうちに息子の初打席は思いがけずすぐにやって来た。
どういう試合だったか全く覚えていないが、息子の打席だけはくっきりハッキリ覚えてる。「ミニゲーム」という試合に出させて頂いたと思う。確か代打だったはずだ。
注:見逃し三振=バットを振らずにアウトになること(通称:みのさん)
結局このときもやっぱりミノサン。お母さん、応援席で腕組んだりして悔しそうな顔をしてましたが、、、数週間後にお子さんが放った初ヒットに目を真っ赤にしてたっけ。決して良い当たりではなかったけど力強く振ったバットに当たったボールはコロコロとライト前に転がり、全力で走ってセーフをもぎ取りました。気持ちのこもった見事なヒット。その1本のために、きっとその喜びのために、一番良いボールを待って待って、ずっとバットを振らずに三振を続けてたんだな。
理由なんてなんでもいい。息子が初めてバッターボックスに立ち、息子なりに勝負し、塁に立ったことは間違いない。
その日の我が家の夕食は、豪華な外食(回転寿司)となり、デザート2品までOKになったのは言うまでもない。
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